亜鉛といえば、いまや言わずと知れた必須ミネラルで、男女問わず大変人気のある栄養素ですよね。
亜鉛をとるメリットといえば、
- 味覚を正常に保つ
- 免疫力を保つ
- 肝臓の働きを保つ
- 成長促進、新陳代謝を上げる
- 抜け毛薄毛の予防
- 二日酔いの予防
- 生殖機能を保つ
このように「亜鉛」は人間が生きる上で欠かせない大変重要な役割を果たす栄養素であるため、国内外問わず非常に多くの会社から、サプリメントが販売されています。
現代人は常に亜鉛不足だといわれており、通常の食事では、なかなか亜鉛を体内に十分とり入れることができていないようです。
ですので、牡蠣など亜鉛を多く含んだ食品以外で補おうと思うと、サプリメントの摂取以外になかなか選択肢がないんですね。
亜鉛をサプリメントで補うことは、私はとても良いことだと思っています。
しかし、そんな人類必須のミネラルである「亜鉛」ですが、実は摂りすぎてしまうと、様々な副作用のリスクがあることをご存じでしょうか。
今回は「亜鉛」の摂りすぎで起こる悪影響について、触れていきたいと思います。
亜鉛の摂りすぎで起こる症状
先述しましたが、亜鉛は通常の食事だけでは、ほとんどの方が不足してしまっていますので、補うにはサプリメントを服用することになると思います。
各メーカーから出ているサプリメントの容量は様々で、国内のものは大体10~15mgほど、海外だと30~50mgの大容量のものが多いですね。
ちなみに一日に必要な亜鉛の摂取量は、男性で11mg、女性で8mgといわれています。
この基準を見る限りでは、日本製の亜鉛サプリメントで十分な量ですよね。
では、「亜鉛の摂りすぎ」となる基準はいくつなのか?といいますと
成人男性で約40mg以上なんだそうです。
海外製の亜鉛サプリだと一発オーバーじゃね?と思ってしまいそうですが、亜鉛の体内の吸収率は約30%と言われているので、サプリの表記通りの容量がそのまま体内に吸収されるとは限らないようです。
さて、摂りすぎてもダメ、摂らなさ過ぎてもダメな亜鉛ですが、摂りすぎてしまうと、体にどういった悪影響があるというのでしょうか?
次からはそれについて触れていきたいと思います。
亜鉛の摂りすぎで起こる副作用にはどんなものがあるの?
亜鉛の摂りすぎによって起こる症状のことを「亜鉛中毒」といい、以下の症状があらわれるといわれています。
- 頭痛
- 下痢
- 吐き気
- 前立腺癌リスクの増加
- HDLコレステロールの低下
- 免疫力の低下
下痢や吐き気が起こる原因は、摂りすぎによって、腸が一定以上の吸収を受け付けなくなると、体外に排出しようとするためだといわれています。
おそらく頭痛も同じ理由でしょう。
個人的に怖いなと思うのが、「癌リスクの増加」「HDLコレステロールの低下」「免疫力の低下」です。体に良いと思って摂っていたものが逆効果になっているわけですから恐ろしいですよね。
では、これら3つの理由についてそれぞれ調べてみました。
亜鉛の摂りすぎが前立腺癌リスクの増加に繋がる理由
亜鉛の摂り過ぎは、前立腺がんのリスクを高める原因となることがあります。
これは、高濃度の亜鉛が前立腺細胞の正常な生理的なプロセスを阻害することによって、細胞の異常増殖を促進する可能性があるからです。さらに、高濃度の亜鉛は前立腺細胞の損傷を引き起こすことがあり、これが癌の原因となる可能性があります。
アメリカ国立がん研究所(NCI)では、亜鉛サプリメントの研究で、1日100mg以上の亜鉛サプリを10年摂取させたところ、前立腺がんのリスクが高まる研究結果が出たとのことです。
男性保健職約5万人からなる Health Professional Fellow-Up Study によるコホート調査の結果, 亜鉛サプリメントを服用している男性に前立腺がんが発生する頻度が高まるとの報告を発表。 この報告によると、100mg/日以上の亜鉛サプリメントを10年以上摂取している男性にその危険が高まるという。前立腺は軟組織で最も多量の亜鉛を含んでいることが知られ、前立腺内に蓄えられた亜鉛には、重要な生理作用が秘められていると推測されている。
健常者に比べると、前立腺がん患者ではこの亜鉛含量が有意に減少していることはよく知られており、また前立腺がん細胞内の亜鉛濃度が上昇すると増殖が阻害されることも報告されている。
そのため、亜鉛の摂取は前立腺がんの予防に効果的であると考えられていたが, 今回のLeitzmannらの報告は、この予想と真っ向から対立するものであった。
そのため、この報告は驚きをもって受け止められると同時に、信憑性に疑問がもたれるなどして物議を醸しだしている。
亜鉛サプリメントの摂りすぎにはご用心 より引用
亜鉛の摂りすぎがHDLコレステロールの低下に繋がる理由
亜鉛の摂り過ぎは、HDLコレステロールを低下させることがあります。
これは、高濃度の亜鉛が肝臓によるHDLコレステロールの生成や代謝を妨げることによって、HDLコレステロールの濃度を低下させる可能性があるからです。さらに、高濃度の亜鉛は肝臓の機能を損なうことがあり、これがコレステロールの生成や代謝に影響する可能性があります。
HDLコレステロールが低下すると、細胞膜や血管が弱くなり、免疫力の低下や恐ろしいことに脳出血に繋がるともいわれています。
亜鉛の摂りすぎが免疫力の低下に繋がる理由
上述したHDLコレステロールの低下との繋がりですが、亜鉛の摂り過ぎは、免疫力の低下も引き起こします。
これは、高濃度の亜鉛が免疫システムの正常な機能を妨げることによって、免疫力を低下させる可能性があるからです。
なぜ免疫機能を低下させるのかには、以下の可能性があります。
- 毒性作用:高濃度の亜鉛は毒性を有することがあり、免疫細胞や免疫システムの正常な機能を妨げることがある
- 細胞内バランスの乱れ:亜鉛は免疫細胞内のバランスを維持することが重要であり、高濃度の亜鉛はこのバランスを乱すことがある
- 抗原提示能の低下:亜鉛は抗原提示能を維持することが重要であり、高濃度の亜鉛はこの機能を低下させることがある
また、上記②の話ですが、亜鉛と銅には互いに打ち消す作用があるといわれており、銅が欠乏するとT-細胞とマクロファージの活性が低下することが報告されています。
健康長寿ネットというサイトにもこのような記載があります。
亜鉛の過剰摂取および長期的な摂取は健康に悪い影響があります。亜鉛サプリメントの不適切な利用や、日常的に高濃度の亜鉛を摂取により、銅の吸収阻害による銅欠乏症(銅欠乏症の症状は、貧血、骨異常、毛髪異常、白血球減少、好中球減少、心血管系や神経系の異常、成長障害などがある)のおそれがあります。
亜鉛は免疫システムの正常な機能に必要なミネラルの一つであり、適切な量の摂取が必要です。しかし、高濃度の亜鉛の摂取は、免疫システムを損ない、免疫力を低下させる可能性があります。
【性別・年代別】 亜鉛の1日の摂取推奨量
亜鉛の1日の平均摂取推奨量
ライフステージ | 摂取推奨量 |
生後6カ月 | 2 mg |
幼児7-12カ月 | 3 mg |
小児1-3歳 | 3 mg |
小児4-8歳 | 5 mg |
小児9-13歳 | 8 mg |
10歳代14-18歳(男子) | 11mg |
10歳代14-18歳:(女子) | 9 mg |
成人(男性) | 11 mg |
成人(女性) | 8 mg |
10代の妊婦 | 12 mg |
妊婦 | 11mg |
10代の授乳婦 | 13mg |
授乳婦 | 12mg |
厚生労働省 eJIM より引用
亜鉛の安全な上限値
亜鉛の安全な上限値
ライフステージ | 安全な上限値 |
生後6カ月 | 4 mg |
幼児7-12カ月 | 5 mg |
小児1-3歳 | 7 mg |
小児4-8歳 | 12 mg |
小児9-13歳 | 23 mg |
10歳代14-18歳 | 34 mg |
成人 | 40 mg |
厚生労働省 eJIM より引用
まとめ
ではまとめです。
亜鉛の摂り過ぎによる「亜鉛中毒」として、以下のような症状がでることがあります。
- 頭痛
- 下痢
- 吐き気
- 前立腺癌リスクの増加
- HDLコレステロールの低下
- 免疫力の低下
亜鉛が体に良いと知ると、より多く摂取したいと思い、もう一錠、二錠多く摂取してみたり、高濃度のサプリメントを選びがちですよね。
その気持ち凄くよくわかります。
しかし、長期的に高濃度の亜鉛サプリを摂取していると、前立腺がんのリスクが高まったり、銅欠乏により免疫が下がったり、肝臓の機能が低下してしまう可能性があることがわかっています。
また薄毛の方の強い味方でもある亜鉛ですが、髪に良いと思って高濃度のものをとり続けていると、銅欠乏により逆効果になってしまうというリスクがあるでしょうから要注意です。
亜鉛に限らず、ちょっと摂ってみたサプリメントで良い結果が出てしまうと、「もっと摂ればもっと良くなるかも」と思ってしまうかもしれません。しかし、サプリメントは所詮は補助的な役割ですので、あまり頼り過ぎず、一日に摂取する容量は守るようにしたいですね。