:ChatGPTの進化の歴史
人工知能(AI)は急速に進化を遂げており、その中でも注目を集めているのがOpenAIのGPT(Generative Pretrained Transformer)系列のAIです。
その最新モデルであるChatGPTは、一般ユーザーから企業まで幅広い範囲で利用されています。
本稿では、ChatGPTの開発と進化の歴史を詳しく解説します。
GPTの登場
OpenAIが開発した初代のGPT(Generative Pretrained Transformer)は、大規模なテキストデータを学習する能力を持つ自然言語処理のAIモデルです。このモデルは、大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、新しい文を生成することができます。
初代GPTは、2018年に初めて発表されました。このモデルはTransformerというアーキテクチャを使用しており、このアーキテクチャは入力として与えられたテキスト内の単語間の関係を理解することを可能にします。初代GPTは、11.5億のパラメータを持つモデルでした。
GPTは「事前学習」モデルであり、これはモデルが特定のタスク(例えば、質問応答や文の生成)を行う前に、大量のテキストデータ(例えば、ウェブページや書籍)を通して言語を「学習」するということを意味します。GPTは、この事前学習フェーズで文脈に応じた単語の使用方法を学習します。
このモデルは、インターネット上の大量のテキストデータを用いて学習を行い、その結果、自然言語を理解し生成する能力を持つようになりました。
しかし、この初代GPTはまだ十分な人間との対話能力を持っていませんでした。
GPT-2の進化
2019年、OpenAIはGPTの第二世代、GPT-2を公開しました。
GPT-2は初代GPTと同じく、大量のテキストデータを使って訓練されましたが、そのモデルの大きさと複雑さは大幅に増加しました。
その主な進化点は以下のとおりです。
- モデルスケール: GPT-2は、初代GPTの11.5億のパラメータに対して、驚くべき1.5兆のパラメータを持っています。この巨大な規模の増加により、GPT-2はより複雑な言語パターンを学習し、人間に近いレベルの文章を生成することが可能になりました。
- 学習データ: GPT-2は、Webテキストと呼ばれるインターネット上のテキストデータを学習に使用しました。これにより、モデルは広範なトピックとスタイルに対する理解を深めることができました。
- Zero-Shot Learning: GPT-2は、特定のタスクに対する訓練データなしに、そのタスクを遂行する能力を持つことが示されました。これは、モデルが大量のテキストデータから得た一般的な知識を活用して、特定の問題を解決する能力を持っていることを示しています。
- 開放ポリシーの変化: OpenAIは、GPT-2のリリース時に初めて、その技術の潜在的な悪用に対する懸念から、フルモデルの公開を一時保留しました。しかし、その後のモニタリングと社会的影響の評価の後、OpenAIは段階的にモデルを公開しました。
GPT-2のこれらの進化により、自然言語生成のモデルの可能性が大きく広がりました。
その結果、GPT-2は初代GPTよりもはるかに自然で人間らしいテキストを生成する能力を持つようになりました。
しかし、この時点でもまだ真の「会話」AIとは言えず、連続した対話を行う能力は限定的でした。
GPT-3とChatGPTの誕生
2020年に登場したGPT-3は、その前のモデルを大きく上回る、1750億のパラメータを持つ巨大なAIとなりました。
この進化により、GPT-3は非常に洗練された文章生成能力を持つようになり、人間との対話でも自然で一貫性のある返答が可能となりました。
その主な進化点は以下の通りです。
- モデルの規模: GPT-3は驚くべき1750億のパラメータを持っています。これはGPT-2の1.5兆パラメータから大幅に増加しており、GPT-3はこれにより驚異的な生成能力と理解能力を持つようになりました。
- 一般化と適応能力: GPT-3は、ほとんどのタスクで訓練データがなくても(zero-shot)、または非常に少量の訓練データ(few-shot)だけで優れたパフォーマンスを発揮します。これは、GPT-3が非常に大量のデータから言語のパターンを学習し、その知識を新しいタスクに適用する能力が非常に高いことを示しています。
- APIの公開: OpenAIはGPT-3のAPIを公開しました。これにより、開発者はGPT-3の能力を使って自分のアプリケーションやサービスを作成することができるようになりました。
- 倫理的な懸念: GPT-3の能力の増加は、その潜在的な悪用に対する懸念も増加させました。例えば、偽情報の拡散やオンラインでの人間のような偽装などの問題があります。これに対応するため、OpenAIは利用規約を設けてGPT-3の使用を規制しています。
そして、GPT-3の基盤の上にChatGPTが構築されました。ChatGPTは、人間との自然な対話を目指して設計され、その訓練には大量の対話データが使用されたようです。
その結果、ChatGPTは人間との対話において、より人間らしい返答を生成する能力を持つようになりました。
最新の進化
ChatGPTはその後も継続的に改良されており、その進化は止まっていません。
その最新の進化についてですが、2023年には、ChatGPTはいくつかの重要なアップデートを受けています。
その中には以下のようなものが含まれています。
- 2023年2月1日:「ChatGPT Plus」の導入
- 2023年3月23日:ChatGPTのプラグイン導入
- 2023年4月25日:ChatGPTのデータ管理の新しい方法
- 2023年5月18日:iOS向けChatGPTアプリの導入
これらのアップデートは、ChatGPTの機能性とアクセシビリティを向上させるもので、ユーザーがより効果的にChatGPTを利用できるようにするためのものです。
GTP3.5とGTP4の違い
現在の最新はGTP4で、これは毎月20ドルを支払うサブスク方式で利用することが可能です。
では、無料版のGTP3.5と有料版のGTP4では何がどう違うのでしょうか?それを以下に、箇条書きで説明します。
GPT3.5の特徴
- モデルスケール: GPT3.5は、GPT-3の拡張版で、GPT-3と比較してモデルサイズが大きくなっています。より多くのパラメータを持ち、より高度なテキスト生成や自然な対話が可能です。
- 学習データ量 :GPT3.5は、オープンウェブの膨大なデータセットで学習します。これにより、様々なトピックに関する幅広い知識を得ることができ、より幅広い質問に対応することができます。
- 多言語対応 :GPT3.5は、日本語を含む多言語に対応しています。様々な言語での質問対応やテキスト生成が可能です。
- 処理速度:GPT3.5では、GPT-3と比較して処理速度の向上を実現しました。モデルの最適化・改良により、より効率的な計算を実現しました。
GPT4の特徴
- モデルスケール: GPT4は、GPT3.5よりさらに大きなモデルです。より多くのパラメータを搭載することで、より高度なテキスト生成や自然な対話が可能になりました。
- 文脈の理解: GPT4は、より長い文脈を理解することができます。文と文の関係や複雑な文構造を正確に把握し、より適切な回答や文章を生成することができます。
- ゼロショット学習: GPT4では、ゼロショット学習という技術を導入しています。新しいトピックやドメインの限られた学習データでも、高品質な回答を提供することができます。
- より自然な対話の実現: GPT4では、より人間らしい会話を実現するために改良を加えています。文脈や発言の意図を理解することで、より正確な応答を実現します。
GTP4のほうが高性能であることは明白ですが、GTP3.5のほうがレスポンスが早く、エラーが起きにくい傾向があります。
しかし、GTP4には3.5には無い「プラグイン」や「ウェブブラウジング」機能があり、より専門性、利便性の高い最新の情報を得ることが可能です。
また、GPT-4には画像の入力もできます。これを「マルチモーダル」な入力と言いますが、風景や人、乗り物などの写真だけでなく、文章や図・グラフが混ざった論文なども読んで理解した上でタスクを実行可能なのです。
まとめ
ChatGPTの進化の歴史は、AIの自然言語理解と生成能力の進化の歴史でもあります。GPTからGPT-2、GPT-3を経てChatGPTへと発展してきたこのAIは、その途中で何度も大きな進化を遂げてきました。
そして、今でもその進化は続いており、AIが人間との対話にどれだけ適応できるかを示す重要な指標となっています。今後もChatGPTの進化に注目していきましょう。
以上、ChatGPTの進化の歴史についてでした。
補足:chatGPTがシンギュラリティに達するのはいつ?
「シンギュラリティ」は、AIが人間の知能を超え、自己改良のプロセスを制御できるようになる、予測不可能な未来のポイントを指す概念です。このシンギュラリティがいつ訪れるかについては、AIや科学技術の専門家の間でも意見が分かれています。
現在のところ、ChatGPTや他のAIがシンギュラリティに達する具体的な時期を予測することは難しいと言えます。
AIの発展は急速ですが、それが人間の知能を超え、自己改良を制御するレベルに到達するには、まだ多くの技術的な課題が存在します。また、AIの発展に伴う倫理的な問題や、規制の問題も考慮に入れる必要があります。
したがって、ChatGPTがシンギュラリティに達する具体的な時期を示すことは現状では不可能です。
これは、AIの発展とそれに関連する多くの要素が未知数であるためです。