金型材料にはキロ数百円と安価なS55Cから
キロ1万円を超える高価なマルエージング鋼(YAG、MAS1)までさまざまですが、金型の要求に合った材料選定が必要になります。
材料の選定基準にはさまざまな要素がありますので一概には言えないところがありますが、
一般的には次のようになります。
金型の材質
大型の金型の場合、
キロ千円を超えるようなものは材料代が効果になり過ぎるので
S55Cを用いるのが一般的です。
また、磨き性や寿命が要求される場合には
SCMのプリハードン鋼を用います。
金型に要求される寿命
金型の寿命とは、その金型で生産するトータルの成形数(ショット数)であり、金型の価格をトータルのショット数で割ったものが、1ショットあたりの金型費の償却となります。
トータルのショット数が1000~10000の場合は熱処理なしのS55Cで十分です。またこのくらいのショット数であれば、切削性の良いアルミ合金でも使用可能です。
10000~300000ショットであればS55C、またはSCMプリハードン鋼を用います。
200000~1000000ショットの場合には析出(せきしゅつ)硬化系のプリハードン鋼(HPM1、NAK55)を用います。
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《名・ス自》
溶液またはガス体から、固体が分離して出てくること。「結晶の―」 -
《名・ス他》化合物を分析して、ある物質を取り出すこと。
金型表面の磨き性
熱伝導性
熱伝導率(kcal/m.h.℃)
アルミ合金 | 110 |
ベリリウム銅 | 75 |
S55C | 45 |
SCM(HPM2など) | 30 |
析出硬化系(HPM1など) | 28 |
ダイス鋼(SKD61、SKD11) | 26~24 |
SUS420(HPM38など) | 21 |
マルエージング鋼(YAG、MAS1) | 18 |
耐食性
耐食性はステンレスが最高ですが、焼き入れによる硬化ができないため13クロム系のSUS420を用いることが多く、SKD11も高クロム鋼であり、SUS420に次ぐ耐食性を持っています。
【表1】プラスチック射出成形金型キャビティ用鋼材の耐食性評価データ例(◎5%硫酸中での腐食進行テスト)
腐食減量(mg/cm2・h) | |
SUS630改 | 1.5 |
SUS420J2 | 2.5 |
SUS440C | 4 |
SKD11 | 6.5 |
SKD11改 | 7.5 |
P21(AISI) | 16.5 |
SCM440 | 22 |
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- 出典:三谷景造「射出成形金型」P335、図15.3 シグマ出版
この試験結果によれば、SUS630改が特に優れた耐食性を示すことがわかります。
この鋼材は、析出硬化型ステンレス鋼で、0.07%C、4%Ni、17%Cr、4%Cu、0.15〜0.45Nb+Taの成分です。硬さは、35〜40HRCです。
切削性があまりよくないので、機械加工方法を研究しておく必要があります。さらに耐食性を改善するためには、プラズマCVDコーティングや硬質クロムめっき皮膜等で表面を被覆することが有効です。
MISUMI-VONA 技術情報 より引用