思考停止する人が増えた理由とは?陰謀論と現代社会の構造を深掘り解説

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「最近、みんな考えてない?」と感じたことはありませんか?

先日、あるYouTube動画にとても強い衝撃を受けました。

この動画では、どうして今の人たちは「自分で考える人」が減っているのかというテーマを、心理学や歴史、メディアの仕組みを交えて丁寧に解説していて、かなりグッとくる内容でした。

今回の記事では、その動画をベースにしつつ、私自身が感じたことや身近な例も交えながら、「思考停止」の正体ってなんなのか? そして、どうやったらそれに流されずに生きていけるのか?を、なるべくわかりやすく掘り下げていきたいと思います。

普段SNSを見ていると、怒りや陰謀、誰かの批判ばかりがタイムラインを埋め尽くしていませんか?ニュースを見ても、何が本当で何が“盛られてる”のか、だんだん分からなくなってくる。そんな中で「これってどうなんだろう」と疑問を持っても、誰かが断定的に意見を言ってくれると、つい「まあ、それでいいか」と思ってしまう。

こんな感覚、なんとなく覚えがある…って人、きっと少なくないと思います。実はこれ、あなたが怠けているわけでも、知識が足りないわけでもないんです。現代は、”考えないことが普通になっている時代”なんです。

なぜ現代人は“自分で考えなく”なったのか?

理由はシンプル。考えるのって、正直しんどいんです。仕事でヘトヘト、家事でクタクタ。そんなときに難しい問題を前にして「さあ、自分で考えよう!」ってなる人、どれだけいるでしょうか?

誰かが「これはこういうことだ」と言い切ってくれると、それに乗っかりたくなる。特に疲れているときはなおさらです。

そして、その誰かが言っていることが陰謀論であっても、信じてしまいやすいというのが現代の怖さです。なぜなら陰謀論は「シンプルで分かりやすく、感情を刺激するストーリー」だからです。

思考をやめることの怖さ|歴史と実験が教えてくれること

この「考えない」って実はすごく怖いことなんです。たとえば動画内でも触れられている1961年にアメリカ・イェール大学で心理学者スタンレー・ミルグラムが行ったミルグラム実験があります。

この実験では、参加者は「教師役」として指名され、隣室にいる「生徒役」(実際には俳優)に対して、問題に答えられなければ電気ショックを与えるように指示されます。電圧は段階的に強くなっていき、最終的には命の危険があるとされる450ボルトまで達します。もちろん本物の電気は流れていないのですが、教師役の参加者にはそれが分からないようになっています。

生徒役の悲鳴や「心臓が~」「やめてくれ」といった訴えにもかかわらず、白衣を着た実験者に「続けてください」「実験のためです」と指示されるだけで、参加者の約65%が最大電圧のスイッチを押し続けました。

ここで恐ろしいのは、加害者となった人々は皆、特別な思想を持った人ではなく、一般的な市民だったことです。

権威者を演じる実験者は、学習者の反応に関わらず実験は続行しなければならないと、台本通りの返答で教師たちにショックを与え続けるよう促した。この実験の悪名高い結果は、学習者の懇願と実験続行の危険性にもかかわらず、驚くほど多くの教師が最大電圧レベルまで実験を続行したという点であった。

参加者のうち最大レベルのショックを与えるのはわずか1~3%だと予測していた。しかし、彼の最初の公式な研究では、40人の男性参加者のうち26人(65%)がそうすることに納得し、生徒が悲鳴を上げる150ボルトの後もショックを与え続けた教師のうち、約80%が最大の450ボルトまでショックを与え続けた。

Encyclopedia Britannica
Milgram experiment | Description, Psychology, Procedure, Findings, Flaws, & Facts | Britannica Milgram experiment, controversial series of experiments examining obedience to authority conducted by social psychologist Stanley Milgram. In the experiment, an...

なぜそんな行動が取れたのか。それは「実験」という正当化によって、自ら考えることをやめてしまったからだと考えられます。

ナチス政権に反対し処刑された神学者ボンヘッファーも、「愚かさとは知的欠如ではなく、倫理的な欠如である。愚か者に真実を語っても無駄であり、むしろ怒りを買うだけだ。…彼は思考することを拒否しており、誰かの言葉をただ繰り返しているにすぎない。」と語っています。つまり、頭が悪いとか無知ということではなく、「考えるのをやめてしまうこと」が一番危険なんです。

note(ノート)
ディートリヒ・ボンヘッファー 『共に生きる生活』 : 〈神〉と共に生きる生活|年間読書人 書評:ディートリヒ・ボンヘッファー『共に生きる生活』(新教出版社) ディートリヒ・ボンヘッファーは、反ナチの抵抗運動に参加して、ベルリン陥落を目前にした大戦末期...

そしてこの思考停止が、陰謀論の拡散にもつながります。陰謀論は「真実っぽい断定」で構成されており、難しい問題を考えなくて済む“逃げ道”にもなってしまうのです。

ただし、注意したいのは「陰謀論=すべて嘘」ではないということです。これまで”陰謀論扱い”されていたものの中には、後になって事実だったと判明したケースも少なくありません。

“陰謀論扱い”されていたが実は事実だった具体例とは?

たとえば、米国の元NSA職員エドワード・スノーデンが暴露した政府による大規模な通信傍受システムは、かつては陰謀論とされていましたが、実際には国家規模の監視活動が行われていたことが証明されました。

また日本では、森友学園や加計学園を巡る公文書の改ざん事件が実際に発覚し、政治と行政による情報操作の実態が表面化しました。さらに、原発政策を推進する政府と大手電力会社との癒着、あるいは企業によるデータ改ざん事件(例:東洋ゴム免震データ問題)なども、長らく“噂”として一蹴されてきたものの、のちに事実として認められた例です。

また、日本の過去には公害問題などでも、当初は地域限定の噂話や住民の声が「過激だ」「科学的根拠がない」などとされていました。たとえば、四日市ぜんそく・水俣病・イタイイタイ病・新潟水俣病のいわゆる四大公害は、長年企業や行政が因果関係を否定していたものの、のちに国も企業も責任を認める結果となりました。

さらに、サリドマイド薬害事件やアスベスト問題、そして薬害エイズ事件も、最初は問題視されず、声を上げた人たちが軽視された例です。特に薬害エイズは、1980年代から90年代にかけて非加熱血液製剤によってHIVに感染した被害者が多数出たにもかかわらず、厚生省(当時)と製薬会社の対応の遅れが被害を拡大させた典型的な国家的医療スキャンダルでした。結果的にこれらは重大な被害を伴う国家レベルの問題として社会に認識されるようになりました。

さらに更に近年では、コロナワクチンをめぐる情報の信憑性についても議論が続いています。初期にはワクチンの安全性や副反応に関する懸念が陰謀論と一蹴されることもありましたが、時間の経過とともに一部のリスクや因果関係が公に検討されるようになり、厚生労働省や海外の保健機関もデータを再評価する動きが出てきました。ここでもまた、「初めは陰謀論とされていたが、完全には否定しきれなかった情報」が存在していたことが示されています。

つまり私たちは、何でもかんでも信じるのも危険だけど、何でもかんでも疑って切り捨てるのもまた危険なのです。情報に対して、0か100か、白か黒か、信じるか信じないかといった極端な態度ではなく、「一部に真実があるかもしれない」「まだ判断するには情報が足りない」といったグレーな思考こそが求められている時代です。だからこそ、自分で調べ、自分で判断する「思考の習慣」が必要なんです。

考えない人が増えているのは社会の構造のせい?

SNSや動画サイトって、怒り・陰謀・断定的な意見のほうが「バズる」仕組みになっています。だから冷静で中立的な情報は見向きもされず、アルゴリズムに埋もれてしまう。

たとえば「地震兵器で人工地震が起きた」とか、「ワクチンにチップが入ってる」みたいな話は、突飛だけど感情を刺激するため、信じたくなる人も出てきます。論理ではなく感情で受け入れてしまうのです。

でも中には、最初は荒唐無稽だと思われていた話が、時間を経て部分的に真実だったと判明する例もあります。だからこそ、最初から「陰謀論=嘘」と思考停止せず、「なぜこう言われているのか」を冷静に追ってみる態度が必要なんです。

しかも、経済不安や仕事のストレスで、そもそも考える余力がない人が多いんですよね。「考えないほうが楽」っていう状態が、社会全体で起きている。

脳も「考えたくない」ようにできている!?

人間の脳って、できるだけエネルギーを節約したいんです。心理学者ダニエル・カーネマンの「システム1/システム2」っていう考え方を簡単に纏めますと

  • システム1:直感的で早いけど雑
  • システム2:論理的で深いけど疲れる
Farnam Street
Daniel Kahneman Explains The Machinery of Thought Daniel Kahneman dissects the machinery of thought into two agents, system 1 and system two, which respectively produce fast and slow thinking.

で、現代の情報社会はこの”システム1″ばかりを過剰に刺激してきます。カーネマンの理論について詳しく知りたい方は、Wikipediaの「二重過程理論」 や、著書『Thinking, Fast and Slow』を参照すると理解が深まります。つまり、”考えなくても反応できるように”設計されているんです。

さらに「認知的不協和」という心理現象もあります。また、私たちが思考を偏らせやすい理由として、「確証バイアス(confirmation bias)」という心理的傾向も知られています。これは、自分がすでに信じている情報だけを集め、それに反する意見や証拠は無視するというものです。たとえば、ある陰謀論を信じている人は、その説を裏付けるような動画や投稿ばかりを好んで見てしまい、反論や事実検証の情報には触れようとしなくなります。

この確証バイアスは、私たちが気づかないうちに思考の幅を狭め、「自分の考えが正しい」という前提から抜け出せなくなる原因にもなります。自分の信じていたことと現実が矛盾すると、人は現実を無視してしまいがち。これも陰謀論が入り込む隙になります。

思考停止に抗うための4つの習慣

ここからが本題です。この4つの習慣は、単なる自己啓発的なアドバイスではなく、現代の情報社会を生き抜くために欧米の教育機関や心理学の現場でも重視されている思考法に基づいています。

たとえば「クリティカル・シンキング(批判的思考)」や「知的謙虚さ(Intellectual Humility)」、「メディアリテラシー」などが代表例です。これらは、ハーバード大学やスタンフォード大学などでもリーダー教育や思考教育の中核として教えられており、SNS時代の混乱を乗り越えるための”基本スキル”とされているのです。

その上で、動画内で語られていることと同内容ですが、実生活で役立つかたちに落とし込んだ4つの思考習慣を改めてご紹介します。

1. 反対意見にわざと触れてみる

自分と逆の意見を見るのって、正直ちょっとムカつく。でもそこにこそ学びがあります。「なんでこの人はこう考えるんだろう?」って想像してみると、自分の視野がぐっと広がるんです。

陰謀論と向き合うときも同じ。「どうしてこの人は信じてしまったのか?」を想像することで、冷静に判断する力が鍛えられます。

2. 確信した時こそ、自分に問い直してみる

「自分の考えが間違ってるとしたら、どんな証拠が必要かな?」って一度考えてみると、思考が深まります。

3. SNSで即レスしない。まず60秒置く

「いいね!」「リツイート!」って反射的にやっちゃう前に、ちょっとだけ間を置いて考える習慣を。

その情報は本当に信頼できる?誰が得する?感情で動いてない?一呼吸置くだけで、誤情報の拡散を防げます。

4. 「分からない」と言える勇気を持つ

今の時代って、すぐに意見を言わなきゃいけない空気がありますよね。でも、「ちょっと調べてからにする」「まだ分からない」って言える人のほうが、よく考えてる人です。

まとめ

誰かの言葉じゃなく、自分の言葉で話す。空気じゃなく、自分の価値観で選ぶ。そのためには、日々「考える」練習が必要なんです。

陰謀論が広がるのも、誰かがバカだからじゃない。私たち誰もが「考えることを放棄しやすい構造」の中に生きているからなのです。

そして、すべての陰謀論を一括りにして否定してしまうこともまた、思考停止の一種かもしれません。事実と虚構を見極めるには、情報の出所を追い、自分の頭で考えるしかないのです。

それは簡単なことじゃないけど、自分の人生を誰かに委ねないための、大事な一歩だと思います。

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