今回はあまり馴染みがないところかもしれませんが、
Gコードの固定サイクル、G82について書いてみたいと思います。
FANUC G82固定サイクルとは?
G82は弊社ではほとんどG83を使用しているためほぼ使用しませんが、
座繰りに主に使用される固定サイクルになります。
要は穴の底でドウェル値を指定し、深さを均一に揃えたい穴加工の場合に使用されます。
ドウェルとは?

ドウェルというのは工具が一定の深さまで到達したときに
そこで時間を指定し、一定時間そこに留まらせて
深さの寸法精度を出すためのものです。
G81やG83での加工では、底に到達した時間が一瞬なので、
複数穴加工した場合に加工後の深さにそれぞれ多少の誤差が出てしまうんです。
ちなみに回転数の指定はCAMソフトで指定するため、手打ちの場合の指定は時間のみになり
P=時間で指令します。単位は
例えばP100の場合 → 穴底でのドウェル時間は0.1秒です。
G82の例
G98(G99)G82 X_Y_Z_R_P_F_,I_,J_;
X80.Y50.の位置に加工する場合。
O0001
G90 G00 G54 X80. Y50.;
G43 Z5. H1 S1000 T2;
M03;
G99 G82 Z-9. R5. P300 F80;
G80;
上記を解説すると、まず、早送りでX80.Y50.まで移動し、
Z5.まで下がります。
工具が1000回転で回転(正回転)し、G82でZ-9.までF80で加工。
Z-5.の最終地点で0.3秒間留まる、という感じです。
P300で1000回転だと底で何回転する?
P300=0.3秒でした。
では1000回転の場合、底でいったい何回転するのでしょうか?
これは
主軸1回転あたりの時間が何秒なのか?ってことがわかれば算出できそうですね。
まず1分間である60秒を回転数1000で割ります。(60÷1000)
すると0.06という数字が出ますが、この数字とP300の0.3秒を比較するんです。
つまりPの値が0.06よりも大きい数字であれば穴底で1回転以上することになるわけです。
今回の場合はP=0.3秒だったわけですから、これは0.06の5倍ですね。
ドウェルの数値の方が60秒を主軸回転数で割った数よりも大きければ、ドウェルは成立するということです。
(今回の場合、0.06<0.3)
P300で1000回転だった場合、穴底でちょうど5回転工具が回転した後、
上がってくるということになります。
S=480回転でP=300だった場合
違う例を出してみると、480回転でP300だった場合、
60(秒)÷480(回転)=0.125
P=0.3秒だったので、 0.125<0.3となるので、ここはOK。
続いて0.3を0.125で割ると? 0.3÷0.125=2.4
つまり480回転でドウェルをP300にした場合、
穴の底で2.4回転回ってから上がってくるということになります。
まとめ
- G82は主に穴の底仕上げ用に使用する固定サイクル
- ドウェル値はF値の一つ前にP_で入力し、P100=0.1秒を表す
- 主軸1回転あたりの時間(秒)÷主軸回転数で算出した数値をドウェル値と比較
あまり使用するGコードではないかもしれませんが、
ドウェルについては知っておいて損は無いでしょう。
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