実は「金型」とひとことで言っても、種類はかなり豊富なんです。
プレス金型、ダイカスト金型、鍛造金型などいろいろありますが、
私たちの会社では、プラスチック製品を大量に作るための「射出成形金型」を専門に製作しています。
プラスチック射出成形金型とは?

今や、家電、自動車、日用品など、身の回りのさまざまなモノにプラスチックが使われていますよね。
この流れ、じつはここ最近ますます加速していて、コスト削減や軽量化のニーズから、
金属やガラスなどからプラスチックへと置き換わるケースが増えているんです。
とくに車の内装部品なんかはわかりやすい例で、
燃費をよくするために車体を軽くしようっていう「エコカーブーム」も影響して、
ここ10年くらいでプラスチックの採用率がグッと上がりました。
では、そのプラスチック製品がどうやって作られているのか、
「射出成形(しゃしゅつせいけい)」という加工法について、もう少し詳しく見てみましょう。
射出成形はざっくり言えば、プラスチックを溶かして型に流し込み、固めて形をつくるという方法です。
具体的には、まず粒状のプラスチック材料(ペレットと呼ばれます)を高温でドロドロに溶かします。
その溶けた樹脂を、金型の中に高い圧力で勢いよく「射出」します。
金型の中で隅々まで樹脂が行き渡るようにしてから冷やして固め、
最後に金型をパカッと開けて、中の成形品を取り出す…という流れです。
この方法のいいところは、同じ形の製品を短時間で大量に、しかも高精度で作れること。
だからこそ、家電やクルマのパーツのように、何万個・何十万個と必要になる製品にピッタリなんです。
金型にどういう機械で樹脂を流して成形するのか?
プラスチック成形に欠かせないのが、**射出成形機(しゃしゅつせいけいき)**と呼ばれる専用の機械です。
この機械に金型を取り付けて、プラスチック製品を自動でどんどん作っていきます。
射出成形機は大きく分けて、以下の2つのパートで構成されています。
- 型締(かたしめ)部分(クランピングユニット):
金型をガッチリ固定し、製品の形をしっかり保つための部分です。 - 射出(しゃしゅつ)部分(インジェクションユニット):
溶けたプラスチックを金型の中に高圧で流し込む部分です。
この成形機の主な役割は、
「金型を閉じて(型締め)、樹脂を流し込み、冷やして固め、そして製品を取り出す」
――という一連の工程をすべて自動でやってくれることにあります。
これがあるから、同じ製品を何千個、何万個と効率よく作ることができるわけですね。
簡単に流れをまとめると、以下のようなステップになります。
射出成形の4つの基本ステップ
- Clamping(クランピング/型締め)
金型をガッチリと閉じて、樹脂が漏れないようにします。 - Injection(インジェクション/射出)
加熱してドロドロに溶かしたプラスチックを、金型の中へ高圧で流し込みます。 - Cooling(クーリング/冷却)
金型の中で樹脂が冷えて固まるまで待ちます。ここで製品の形が決まります。 - Ejection(エジェクション/取り出し)
金型を開き、中にできた製品を機械で押し出して取り出します。
この4ステップが、数十秒~1分程度で繰り返されることで、
次々と同じ形のプラスチック製品が作られていくというわけです。
成形機の性能や金型の精度が高ければ高いほど、
より複雑な形状の製品でも、スピーディーかつ正確に作れるようになります。
射出成形の分かりやすい動画
百聞は一見に如かずということで
射出成形の分かりやすい動画を調べてみましたので載せていきます。
良い成形品を取り出すためにはあらゆる条件が必要です
実は、どんな樹脂を使うかとか、金型の構造がどうなっているかによって、
製品の取り出し方にもいろんなパターンがあります。
たとえば、エジェクターピンで押し出す方法、エアーで吹き飛ばす方法、ロボットでつかんで取る方法など、ケースバイケースです。
そしてもう一つ重要なのが、「成形条件」と呼ばれる細かな設定です。
この条件の調整が、良い製品(=良品)を安定して作るためのカギになります。
成形条件にはたとえばこんなものがあります。
- 樹脂の温度(高すぎても低すぎてもダメ)
- 射出するスピード(射出速度)
- 金型の温度管理
- 冷却時間や保圧時間 などなど
これらの数値やバランスがちょっとでもズレてしまうと、
「寸法が合わない」「ヒケや反りが出る」「表面が荒れる」など、
さまざまな不良につながってしまうんです。
だからこそ、成形機を扱う技術者の腕前や、現場での品質管理の精度がとても重要になってくるんですね。
単純に「型に流し込めばできあがる」って思われがちですが、
実際には繊細で奥深い世界なのが、射出成形の面白さでもあります。
まとめ|射出成形金型の基礎とその奥深さ
この記事では、プラスチック製品を作るうえで欠かせない「射出成形金型」について、その仕組みや成形機の役割、さらには成形条件の重要性など、基本的なポイントを紹介してきました。
一見すると、ただ金型に樹脂を流し込んで冷やすだけの単純な工程に思われがちですが、
実際には「金型の設計」「成形機の構造」「材料の選定」「条件設定」など、非常に多くの要素が関わっており、高度な技術と経験が求められる繊細なものづくりです。
とくに、温度や射出速度、冷却時間などの細かな設定=成形条件は、
製品の仕上がりを大きく左右する重要な要素であり、
ちょっとした違いで不良品になることも珍しくありません。
そのため、安定した品質を維持するには、現場の技術者のスキルや品質管理の徹底が欠かせません。
プラスチック製品は、今後も私たちの生活に欠かせない存在であり続けるでしょう。
それを支えているのが、こうした射出成形金型の技術であることを、少しでも感じていただけたら幸いです。