「金型を修理したいけれど、製作した会社に頼めなくなってしまった」
「今までお願いしていたところでは、納期が間に合わない」
「他社で作った金型を持ち込んだら、嫌がられるのでは……」
金型の修理先を探すとき、こんなことで迷っていませんか。
結論からいうと、他社で製作した金型でも、修理できる場合はあります。 製作元が違うという理由だけで、修理ができなくなるわけではありません。
ただし、「どんな金型でも、すぐに直せます!」と言い切れるほど、金型は素直ではありません。外からは小さな不具合に見えても、中を開けると別の原因が見つかることもあります。
今回は、私たち金型メーカーの立場から、他社製金型の修理を相談するときに知っておいてほしいことと、事前に準備していただけると助かる情報をお話しします。
他社製の金型で、まず確認したいこと
自社で製作した金型なら、構造や部品の材質、組み立て時に調整した箇所などを、図面や製作記録からたどれます。
一方、初めて見る金型では、その確認から始まります。
同じような製品を作る金型でも、入れ子の分け方、スライドの構造、部品の固定方法はさまざまです。「このボルトを外せば取れるだろう」と思ったら、反対側からも固定されていた、ということもあります。
金型にも、作り手の考え方が出るんですね。初対面でいきなり全部を理解するのは、人間関係と同じで少々難しいものです。
そのため、他社製金型の修理では、不具合の内容だけでなく、構造・状態・加工の可否を確認してから、修理方法を判断することになります。
また、金型の大きさや重量も重要です。加工機に載るかだけでなく、搬入できるか、安全に持ち上げて分解できるかも確認が必要です。技術的には修理できそうでも、設備の都合でお引き受けできない場合があります。(弊社の場合、1.5tのフォークリフトで上がらないもの、モールドベースで長手方向650mmを超えるものは、お断りすることがあります)
「ここを直してほしい」に、症状の説明を添えてください
たとえば、「バリが出るので、この部分を修正してほしい」というご依頼。
もちろん、発生箇所は大きな手がかりです。ただ、バリが出ている場所と、原因になっている場所が同じとは限りません。
合わせ面の傷や摩耗だけでなく、スライドを支える部分の当たり、金型の合わせ状態、成形条件なども確認したいところです。
見えているバリだけを追いかけて修正すると、いったん収まっても、また同じ症状が出る可能性があります。
「ここを削ってください」という加工指示に加えて、何に困っていて、どのような状態にしたいのかを教えていただけると、修理方法を検討しやすくなります。
依頼前に準備していただきたい7つの情報
1.金型の全体写真・外形寸法・重量
まずは、金型全体の写真と、おおよその外形寸法、重量をお知らせください。型番や製品名も分かると、やり取りがスムーズです。
写真は全体に加えて、問題が出ている箇所のアップがあると助かります。アップ写真だけでは金型のどこなのか分からないことがあるので、「全体」と「近く」のセットがおすすめです。
写真に丸印を付けて「この部分です」と示していただくだけでも、伝わり方は大きく変わります。
2.不具合が分かる成形品サンプル
バリ、白化、変形、傷などのご相談では、実際の成形品が大きな手がかりになります。
可能であれば、不良品だけでなく、以前の良品や合格見本もご用意ください。複数個取りの金型なら、どのキャビティで発生したものかも分かると助かります。
特にバリは、できれば除去する前の状態でお願いします。きれいに仕上げていただくお気遣いはありがたいのですが、修理の調査では、そのバリこそ見たい部分だったりします。
良品と不良品を分け、問題箇所に印を付けていただけると、確認が進めやすくなります。
3.いつから、どのような条件で発生しているか
「バリが出る」という情報に、次のような経緯が加わると、調べるべき箇所を絞りやすくなります。
- 最初から発生していたのか、最近になって出始めたのか
- 徐々に悪化したのか、突然発生したのか
- 毎回出るのか、ときどき出るのか
- 全キャビティで出るのか、特定の箇所だけなのか
- 成形開始直後と、連続成形後で違いがあるか
成形機を替えた、樹脂を変更した、金型を分解清掃したなど、発生前後の変化も教えてください。
「関係ないかもしれませんが……」という一言が、原因を考える手がかりになることもあります。
4.製品図面・金型図面・3Dデータ
製品図面、金型の組立図、部品図、3Dデータなどが残っていれば、ご提供いただける範囲でお願いします。
製品図面では、寸法や公差、特に守りたい箇所を確認できます。金型図面や部品図があれば、内部構造や部品形状の把握に役立ちます。
ただし、注意したいのは、図面と現物が同じ状態とは限らないことです。
量産途中で設計変更や修正をしていて、その内容が図面に反映されていないこともあります。「このデータは修正前です」といった情報も、ぜひ一緒にお知らせください。
古い図面が悪いわけではありません。古いと分からずに使うと、話がややこしくなるのです。
5.使用樹脂・成形条件・成形機の情報
分かる範囲で、樹脂のメーカーやグレード、成形機、型締力の設定、金型温度、射出・保圧条件、冷却時間などもお知らせください。
細かな数値をすべて最初からまとめる必要はありません。まずは、普段の条件表や、条件を変更した記録があるかどうかを教えていただければ十分です。
金型に手を加えるべきか、成形条件も合わせて確認すべきかを考えるための情報になります。
「条件を変えたら少し改善した」「ある条件では発生しない」という結果も、大切な手がかりです。
6.過去の修理・改造履歴
過去に溶接した箇所、交換した部品、削って調整した部分などが分かれば、教えてください。
同じ場所を何度も修理している場合、表面の傷みだけでなく、その周辺の支え方や合わせ状態も確認したくなります。
また、部品を再製作する際は、材質や熱処理の情報も重要です。見た目が同じ鋼材でも、必要な性質まで同じとは限りません。
きれいな修理報告書がなくても大丈夫です。「昨年、このあたりを肉盛りしたはず」といった情報でも、何も分からない状態より調査を進めやすくなります。
7.希望納期・金型を預けられる期間・修理後の合格基準
希望納期とあわせて、金型をいつから、どのくらいの期間預けられるかをお知らせください。
修理には、現物確認、必要に応じた分解、部品手配、加工、組み立て調整などの工程があります。交換部品の製作や熱処理、外注加工が必要なら、その時間も見込む必要があります。
そして、意外と大事なのが、修理後の確認方法です。
「バリを減らしたい」のか、「後加工なしで合格する状態が必要」なのかでは、目指す状態が違います。寸法や外観の判定基準、成形トライを行う場所や日程まで共有できると、修理完了後の行き違いを減らせます。
図面がなくても、相談はできます
「昔の金型なので、図面が残っていないんです」
こうした場合でも、現物の確認や測定によって修理を検討できることがあります。図面がないからといって、その時点で諦める必要はありません。
ただし、摩耗した部品を測れば、元の正しい寸法がそのまま分かるわけではありません。摩耗した状態を忠実にコピーすると、新品なのに摩耗後の寸法、という困ったことになります。
相手部品との関係や、製品に必要な寸法を確認しながら、どの状態に戻すべきかを考える必要があります。
そのため、図面がある場合より調査や測定に時間がかかり、費用に影響することがあります。図面の有無は、最初のご相談でお伝えください。
見積もりと納期は、現物確認後に変わる場合があります
写真や資料から、ある程度の修理方針を立てられる場合はあります。ただし、分解して初めて分かる摩耗や破損もあるため、最初のお話だけで費用と納期を確定できるとは限りません。
ご相談の際には、概算なのか正式な見積もりなのか、分解調査に費用がかかるのか、追加の不具合が見つかった場合はどう進めるのかも確認しておくと安心です。
また、部品単体で修理できる場合もあれば、相手部品や金型に組み込んでの調整が必要な場合もあります。送付する範囲は、事前に相談して決めましょう。
「とりあえず金型を送りました!」という勢いは、いったん少しだけお待ちください。受け入れや荷下ろしの準備も含め、先に確認できると助かります。
最初から、全部そろっていなくても大丈夫です
ここまで読むと、「修理を頼む前に、ずいぶん宿題があるな」と感じたかもしれません。
でも、最初からすべての資料をそろえていただく必要はありません。
まずは、金型の写真と大きさ・重量、不具合の内容、希望納期。このあたりからお知らせいただき、必要な情報を順番に確認していけば大丈夫です。
他社製金型の修理で大切なのは、どこで作られたかだけではなく、今どんな状態で、何を改善したいのかを共有することです。
名岐金型へご相談いただく際も、分かる範囲の情報をお送りください。金型の構造や状態、大きさなどを確認しながら、対応の可否と修理方法を検討します。
金型は、自分から「ここが調子悪いです」とは言ってくれません。その代わりになるのが、現場で見ている皆さまの情報です。
「この程度のこと、伝えるほどでもないかな」という話も、ぜひ添えてください。修理の第一歩は、意外とそんな一言から始まります。

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