DMU50で「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」エラー!原因はまさかのプルスタッドの緩み

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加工の段取りを済ませ、工具長も測定完了。

「よし、これで加工を始められる」

そう思ってプログラムをスタートしたら、DMU50の画面にこんな表示が出ました。

「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」

……工具はちゃんとセットしたはずですけど?

スピンドルは主軸のこと。表示を読む限りでは、主軸に入っている工具と、機械がマガジンリストで管理している工具の情報が一致していない、という意味に受け取れます。

こちらとしては、ちゃんとT1に工具をセットしたつもりです。工具長も測っています。それなのに、機械から突然の本人確認NG。

工具に身分証を持たせておけばよかったのでしょうか。

今回は、そんな少し不可解なエラーに振り回された、実際の現場でのお話です。結論からいうと、原因となっていたのはプルスタッド(スタッドボルト)の緩みでした。

ただ、この話には「締めたら直りました」だけでは終わらない、ちょっと意外な点があります。

目次

工具長まで測れたのに、加工を始めるとエラー

今回の流れは、いたって普通でした。

  1. DMU50のT1に工具をセットする。
  2. 工具長を測定する。
  3. プログラムを開始する。
  4. 「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」と表示されて停止する。

工具のセットで止まったわけではありません。工具長測定もできています。

ここまで進めば、普通は「工具はちゃんと入っている」と思いますよね。

ところが、いざ加工となると動かない。

「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」と言われると、まず頭に浮かぶのは、主軸に入っている工具とマガジンリストの対応、工具番号や登録内容です。まさか工具の後ろにあるボルトが緩んでいるとは、なかなか結びつきません。

エラーは出ている。でも、エラーの文章から原因にたどり着けない。

現場では、このパターンがなかなか手ごわいのです。

リセットしてもダメ。電源を入れ直してもダメ

何度リセットして繰り返しても、結果は同じでした。

そこで、いったん電源を落として再起動。

機械に限らず、パソコンでも何でも、困ったときは一度やりますよね。「寝て起きたら機嫌が直っていないかな」という、あの作戦です。

しかし、今回は機嫌の問題ではありませんでした。

再起動しても、また同じ表示。

「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」

機械の主張は一貫しています。こちらも「その工具で合っているんですけど」と言いたい。

残念ながら、話し合いで解決する機能は搭載されていません。

原因は、約3回転も緩んでいたプルスタッド

その後、原因がわかりました。

工具ホルダーのプルスタッドが緩み、約3回転分、外側に出っ張っていたのです。

プルスタッドは、工具ホルダーの後ろ側に取り付けられた、主軸側の機構が工具を引き込んで保持するための部品です。今回のようなプルスタッドを使う工具ホルダーでは、目立たないながらも大切な役割を担っています。

加工するのは工具の先端なので、つい刃物のほうに目が向きます。ところが今回は、後ろ側の部品が原因でした。

主役のエンドミルを疑っていたら、舞台裏でボルトが自由行動していたわけです。

このプルスタッドを締め付けて元に戻し、もう一度プログラムを再開すると……。

何事もなかったように加工が進みました。

さっきまでの頑固さは、いったいどこへ。

直ってほっとした一方で、「それなら、もう少しわかりやすく教えてほしかったな」という気持ちも残ります。

驚いたのは、工具長の変化がわずか0.001mmだったこと

ここで気になるのが、工具長です。

プルスタッドが約3回転も緩んでいたなら、工具の収まり方も変わっていたのではないか。そう考えて、締め直した後に工具長を測り直しました。

ところが、締め直す前後の差は、わずか0.001mm

1μmです。

工具の周りも確認しましたが、異常は見当たりませんでした。

つまり、今回の状態はこうです。

  • 工具はセットできていた。
  • 工具長も測定できていた。
  • 確認した工具周辺には異常が見当たらなかった。
  • 締め直しても、工具長の差はわずか0.001mmだった。
  • それでも、プルスタッドは約3回転緩んでいた。

「工具長がほとんど変わらないから、緩みもないはず」とは言えなかったのです。

数字は教えてくれます。でも、すべてを教えてくれるわけではない。今回はそれを実感しました。

なお、プルスタッドが3回転分出ていたからといって、その分だけ工具先端も出ていた、という話ではありません。実際に測った工具長は、前後でほとんど変わっていませんでした。

なぜ「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」と表示されたのか?

正直にいうと、ここはまだ断定できません。

今回確認できたのは、プルスタッドが緩んだ状態ではエラーが続き、締め直すと正常に加工できたという事実です。

表示が直接伝えているのは、主軸の工具とマガジンリストの不一致です。ただし、プルスタッドの緩みが、どのような経路でこの不一致の判定につながったのかは確認できていません。

内部の引き込み機構の位置や保持状態、工具交換の完了確認などに影響した可能性は考えられますが、いずれも今回の経緯から考えられる仮説です。

ただし、実際にどのセンサーや信号が関係し、なぜこの文言で停止したのかまでは確認できていません。ここを「DMU50はこのセンサーで緩みを検出します」と書いてしまうと、体験談がいつの間にか推理小説になってしまいます。

また、工具長測定まで進めた理由も、今回の情報だけでは説明しきれません。

工具先端の位置がほぼ同じだったことと、内部の保持状態が正常だったことは、分けて考える必要があります。

「測れたから大丈夫」と判断できなかった点が、今回の重要な気づきでした。

同じメーカーのNVX5080では、セットの段階で止まる

もうひとつ、気になったことがあります。

当社で使用している同じメーカーの3軸マシニングセンタ、NVX5080では、プルスタッドが緩んでいると工具をセットできません。

今回のDMU50との違いを、当社での経験として整理するとこうなります。

比較する点今回のDMU50当社で使用しているNVX5080
プルスタッドが緩んだ状態での工具セットセットできたセットできない
工具長測定測定できた工具セットの段階で先に進めない
異常に気づくタイミング加工開始時のエラー工具セット時

作業する側としては、工具を取り付ける段階で止まってくれたほうが、「工具やホルダーに何かあるのかな」と気づきやすいと思います。

今回のDMU50は、セットできて、測定もできて、その先で止まる。しかも表示は「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」。

途中まで順調に通してくれた受付で、最後に「お客様、お名前が名簿と合いません」と言われるような戸惑いがあります。

もちろん、この経験だけで「DMU50は全部こうだ」「5軸機はこういう仕組みだ」と言い切ることはできません。年式や主軸仕様、工具保持機構、検出条件などによって違う可能性もあります。

あくまで、当社で使っている2台で経験した違いです。

エラー表示に、もう少しヒントがほしい

今回、加工開始時に機械が止まったこと自体は大切です。

ただ、現場で原因を探す立場としては、表示にもう少しヒントがあると助かります。

「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」と言われたら、まず工具番号やマガジンリストとの対応を疑いますよね。

仮に工具の保持状態に関係する停止なら、「工具クランプ状態を確認してください」といった案内があれば、確認する方向も変わります。

機械がプルスタッドの緩みそのものを特定できるとは限りません。それでも、どの部分の確認で引っかかっているのかがわかれば、原因探しはずいぶん進めやすくなるはずです。

「リストと一致しない」という情報はあるものの、そこからプルスタッドの緩みを思い浮かべるのは、なかなか難しいところです。できればヒントをもう一枚お願いします。

今回の経験から、次に確認したいこと

同じようなエラーが出ても、すべてプルスタッドの緩みが原因とは限りません。工具番号や登録内容、プログラムの指定を確認することも必要です。

そのうえで、今回の経験からは、工具の後ろ側も確認候補に入れておきたいと感じました。

特に、工具がセットできることや工具長が測れることだけで、保持に関係する部分まで正常だと決めつけないことです。

緩みが見つかった場合は、単に力いっぱい締めればよいというものでもありません。使用しているホルダーのメーカー指定に従って締め付け、プルスタッドやねじ部の状態も確認することが大切です。締め直した後の工具長再測定も欠かせません。

今回は再測定の差が0.001mmでしたが、次も同じとは限りません。「前は大丈夫だった」は、工具補正値の代わりにはなりませんからね。

そして、同じ緩みが繰り返される場合や、保持状態に疑問が残る場合は、そのまま使い続けず、機械やホルダーのメーカーに確認したいところです。

小さな部品に、しっかり振り回された一日

今回のトラブルは、プルスタッドを締め直すことで解消しました。

ただ、原因にたどり着くまでには、リセットしてもダメ、電源を入れ直してもダメ。工具長は測れていて、周囲にも異常が見当たらないという、なかなか紛らわしい状況でした。

工具番号は合っている。工具長もほとんど変わらない。それでも、工具の後ろではボルトが緩んでいた。

現場では、こういう「そこだったのか」ということが起こります。

DMU50で「510231 スピンドルの工具がマガジンリストと一致しない」と表示され、工具番号などを確認しても原因がわからないとき。今回のように、プルスタッドの状態が手掛かりになることもあるかもしれません。

もちろん、これだけで原因を決めつけることはできませんが、同じように困っている方の確認候補になれば幸いです。

それにしても、立派な5軸加工機を前に、小さなボルトひとつで頭を抱えるとは。

工具の先端だけでなく、たまには後ろ姿にも目を向けないといけませんね。

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