そこそこ古い金型が修理として持ち込まれることがあるのですが、大抵PLが開いてくれなかったり3プレートの中間板の動きが鈍くなっていることがあります。
今回はガイドピンやサポートピンの動きが悪い場合、どんな原因があるのか?またその対策や解決方法について書きたいと思います。
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ガイドピンやサポートピンの動きが悪い
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まず原因として考えられるのは
- ピンが曲がっている
- 古いグリスがピンの油溝などに固着している
- ピンがカジっている(カシっている)
- ピンに焼き付きが起こっている
- ピンやブッシュに錆び付きがある
- 一時的な異物の嚙みこみ
- モールドベースに反りが出て各穴ピッチが不揃いになっている
以上のことが考えられます。
これらの最たる原因は経年劣化ではあるのですが、同時に金型のメンテナンス不足や保管状態が悪いことで発生するものでもあります。
では次に対策です。
動きが悪くならないようにするには?
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- 適切な潤滑剤(グリース)を塗布し、定期的に補充する
- 定期的な清掃(特にガイド部やブッシュ内を重点的に)
- 金型の偏荷重がないか確認し、均等に力がかかるようにする
- 長期間使用しない場合は、ピンやブッシュの防錆処理を実施
対策としては以上のことが考えられます。
グリースは耐熱・耐水性のある潤滑剤(モリブデングリースなど)を選択し、古いグリスは焼き付いて固着してしまうので、古いものをパーツクリーナーなどで一度清掃してから塗布するようにしましょう。
また偏荷重に近い内容として次のような例もあります。ピンゲートでの3プレートの型で、PLが開いた状態のときにサポートピンの長さが固定ベースを支えきれず、固定ベースが若干前に垂れたような状態になっていることです。この場合、ピンが傾いたベースに対して常に擦りながら出入りするため、金型の温度が上がってくるとピンがかじる原因となり、次第に動きが悪くなってきてしまいます。
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異常なまでに動きをスムーズにする方法
ピンを新品に変えてもなんだか動きが鈍い・・・そういうときは大抵モールドベースに反りが出てしまっていて現在の穴ピッチではどうにもならない状況になっています。
モールドベースに反りが出るのは、ベースに必要十分な厚みがない場合や、金型寿命が来ている、もしくは経年劣化によるものです。そういった金型はベースの中央部分だけべこっと凹んでいたり、ランナー部分に何か所にも大きくバリが出ていたりしています。
ベースのブッシュ穴を加工しなおすという選択肢もありますが、ちょっと面白い別の方法もあります。
それはガイドブッシュをすべて「スライドブッシュ(リニアブッシュ)」に交換してしまうことです。
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この改造は弊社で実際にしたことがあるのですが、面白いほどスムーズにモールドベースが動くようになります。
500x450x厚み80ほどの大きなベースであるにも関わらず片手で動かせるほどに。
あまりにスムーズに動くので分解の時は取り扱い要注意なのですが、グリースを塗布する手間はほぼなくなります。
まとめ
問題点 | 主な原因 | 対策 |
---|---|---|
磨耗・焼き付き | 繰り返しの使用、潤滑不足 | 高硬度材料、潤滑剤の適用 |
異物の噛み込み | バリ、ゴミの混入 | 清掃、成形条件の見直し |
ピンの変形・反り | 過負荷、取り付けズレ | 強度向上、精度確認、新たに交換 |
クリアランス異常 | クリアランス不適切、熱膨張 | 適正値に調整、材質の選定 |
潤滑不良 | グリース劣化、不適切な潤滑剤 | 定期補充、耐熱グリース使用 |
組付け精度不良 | 位置ズレ、締め付けトルク過大 | 位置精度測定、均等締め付け |
環境要因 | 温度変化、湿気・腐食 | 環境管理、防錆対策 |
モールドベースの反り | 厚み不足、経年劣化 | 穴の再加工、リーマ加工 |
このような点をチェックすると、問題の原因が特定しやすくなります。どの症状が出ているかによって、適切な対策を講じてみてください。