摩耗した金型部品は再製作できる?スライドコア・入れ子・ギアの修理方法

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金型を長く使っていると、以前は出なかった場所にバリが出たり、スライドの動きが悪くなったりすることがあります。

分解してみると、部品の角が丸くなっていたり、摺動面に傷が入っていたり。金型は黙々と働いてくれますが、さすがに「何十万回でも無傷です」とまでは言ってくれません。

そんなときに気になるのが、「この部品だけ作り直せるのか?」という点です。

摩耗した金型部品は、状態や構造によって、修理や部品単位での再製作が可能です。 スライドコアや入れ子、機構部に使われるギアが傷んだからといって、金型一式を新しくするとは限りません。

ただし、部品を新品にすれば必ず解決、というほど単純でもありません。今回は、私たち金型を製作する側の視点から、修理方法と再製作を考えるポイントをご紹介します。

目次

摩耗した部品は「削る」「足す」「作り直す」で考える

金型部品の修理は、大きく分けると、研削や磨きで整える方法、溶接などで肉盛りして形状を戻す方法、部品そのものを再製作する方法があります。

たとえば、摺動面にできた軽いかじりや盛り上がりなら、損傷部を除去して当たりを調整できる場合があります。一方、摩耗して必要な寸法がなくなった部分は、磨くだけでは戻りません。

ここは意外と大切です。見た目がピカピカになっても、減った鉄が帰ってくるわけではありません。磨きは得意でも、時間を巻き戻す機能までは付いていないのです。

肉盛り溶接で不足した部分を補い、再加工する方法もありますが、材質や熱処理状態によっては割れ、変形、硬さの変化などに注意が必要です。製品の外観面では、補修部と周囲の磨き上がりの違いが問題になる場合もあります。

そのため、「溶接できるか」だけでなく、「補修後に必要な精度や耐久性を確保できるか」まで考えて方法を選びます。

部品の状態検討する主な対応確認したいこと
軽いかじり・局所的な傷損傷部の除去、研削・磨き、当たり調整除去後の寸法や隙間が許容できるか
局所的な摩耗・欠け肉盛り補修後の再加工、部分的な入れ子化材質、熱影響、周囲の強度や構造
広範囲の摩耗・大きな損傷部品の再製作相手側の摩耗、材料・熱処理、組付け精度
修理しても同じ不具合を繰り返す原因調査と構造・仕様の見直し荷重、案内、潤滑、作動タイミング

※実際の対応は、損傷の程度や要求精度、残りの生産予定などによって変わります。

スライドコアの修理|バリの原因は先端だけとは限らない

スライドコアは、製品の横穴やアンダーカット形状などを成形する部品です。型の開閉に合わせて動くため、製品を形づくる部分だけでなく、案内面や押さえ面も確認する必要があります。

スライド周辺にバリが出ている場合、製品形状をつくる合わせ面が摩耗していることもあれば、スライドを支える部分の摩耗によって、成形圧力を受けたときに位置がずれていることもあります。

つまり、バリが出ている場所と、本当に直すべき場所が同じとは限りません。

先端の合わせ面ばかり直しても、後ろで支えるロッキングブロックや案内部に問題が残っていれば、再発する可能性があります。主役のスライドだけ新品にしても、脇を固める部品が疲れていては本領を発揮できないわけです。

修理では、合わせ面の補修に加えて、摺動面、ガイド、摩耗板、ロッキングブロックなどを確認します。軽度なら調整や関連部品の交換で対応できる場合がありますが、スライド全体の摩耗が大きい場合や、補修を繰り返している場合は再製作も候補です。

再製作で大切なのは、単品の寸法だけでなく、金型に組み込んだ状態で確認すること。 作動が滑らかか、閉じた位置が正しいか、押さえ面が適切に当たっているかまで見ます。

「図面どおりに作りました」で終わらず、「組み込んで、狙った動きをする」ところまでが仕事です。

入れ子の修理|部分交換できる利点を生かす

入れ子は、金型の一部分を別部品として組み込んだものです。製品形状をつくる部分などに使われ、傷んだ箇所を部品単位で交換できる構造なら、金型全体を作り直す負担を減らせます。

たとえば、合わせ部の摩耗、細い部分の欠け、製品面の傷などが修理の対象になります。

局所的な損傷なら肉盛り補修と再加工で対応できる場合があります。一方、広い範囲で寸法が崩れている場合や、割れがある場合、製品面への補修跡が問題になる場合は、入れ子の再製作を検討します。

ここで気を付けたいのが、入れ子を受ける側の状態です。

新しい入れ子を作っても、取付けポケットや受け面が傷んでいれば、位置や高さが安定しない可能性があります。新品の靴を用意しても、靴底の下に小石が挟まっていたら歩きにくいのと似ています。

入れ子の外形や製品形状に加え、周囲との段差、合わせ面、エジェクタピンとの関係、冷却穴やシール部との位置関係も確認します。

また、一体で作られた部分を新たに入れ子構造へ変更する方法もありますが、どこでも自由に分割できるわけではありません。冷却穴やエジェクタピン、固定用のねじ、周囲の肉厚との兼ね合いがあるため、構造の確認が必要です。

ギアの修理|歯を直す前に相手と軸も確認する

ねじ抜き機構などを持つ金型では、ギアやラックを使って部品を動かすことがあります。

こうした部分で歯面が摩耗したり、歯が欠けたりすると、動作のがたつきや位置ずれ、異音などにつながります。ただし、症状の原因がギアだけとは限らず、軸や軸受、取付け部の摩耗が関係している場合もあります。

歯面が大きく摩耗したギアは、少し削って整えれば元どおり、とはいきません。歯形や歯の厚みが変わるため、交換や再製作を軸に検討します。

標準品が使える場合は、適合する市販ギアへの交換が候補です。特殊形状なら、元の仕様を確認したうえで再製作します。

再製作には、歯数だけでなく、モジュール、圧力角、歯幅、軸穴、キー溝、材料、熱処理などの情報が必要です。歯車の種類によっては、ねじれ角や転位の有無なども確認します。

また、相手側のギアが大きく摩耗していれば、片側だけを新しくしても適切にかみ合わないことがあります。セットでの交換が必要かどうかも、実物を見て判断します。

組付けでは歯当たりとバックラッシも重要です。バックラッシは歯同士のかみ合いに設ける遊びで、滑らかな作動には適切な量が必要です。「がたをなくそう」と詰めすぎればよいものではありません。参考:小原歯車工業「Spur Gears」

なお、形状によっては焼入れ後の材料からワイヤーカットで歯形を加工する方法も選択肢になります。ただし、すべてのギアに使えるわけではなく、形状、精度、歯面の仕上げ要求に合わせて加工方法を選びます。

図面がない古い部品でも再製作できる?

図面や3Dデータがなくても、現物を測定して再製作を検討できる場合があります。

ただし、ここには一つ落とし穴があります。

摩耗した現物をそのまま写すと、摩耗した形状まで再現してしまうことです。

新品なのに最初からすり減った寸法では、何のために作ったのか分からなくなります。忠実なコピーにも、場面を選んでもらわなければいけません。

現物から再製作するときは、摩耗していない部分、相手部品、製品図面、良品サンプルなどを照らし合わせ、必要な形状や寸法を検討します。材料や熱処理が不明な場合も、そのまま断定せず、調査や仕様の相談が必要です。

元の状態を判断する手掛かりが少なければ、追加の測定や設計検討が必要になり、再製作が難しい場合もあります。古い図面や修理記録が残っていると、こういうときに頼もしい存在になります。

修理か再製作かは、残りの生産予定でも変わる

修理と再製作を比べると、どうしても目の前の費用に目が向きます。

もちろん費用は大事です。私たちも、見積書の数字が小さいだけで少し安心する気持ちはよく分かります。

ただ、判断したいのは今回の修理代だけではありません。修理後の耐久性、再び止まる可能性、不良品やバリ取りの負担、今後の生産数量も含めて考えます。

残りの生産が少なく、必要な品質を確保できるなら、部分補修が合理的なこともあります。反対に、今後も長期間使う金型で、同じ場所の修理を繰り返しているなら、再製作したほうが結果的に負担を抑えられる場合があります。

納期も、部品の大きさだけでは決まりません。小さな部品でも、材料手配、熱処理、放電加工、研削、組付け調整などが必要なら、それぞれの工程に時間がかかります。

「小さいからすぐできる」は、金型屋が少し返答に困る言葉の一つです。小さな部品ほど、なかなか手ごわいこともあります。

修理の相談は、不良サンプルや相手部品もあると進めやすい

修理方法を検討するときは、傷んだ部品の写真に加えて、次のような情報があると判断しやすくなります。

  • 金型図面、部品図面、3Dデータ
  • 不具合が出た成形品と、比較できる良品サンプル
  • バリや寸法不良が発生する位置
  • 不具合が出始めた時期や過去の修理内容
  • 分かる範囲での部品の材質・熱処理情報
  • 今後の生産予定と、金型を止められる期間

部品単体では判断できない場合には、相手部品や金型全体の確認も必要です。

特に、成形中の負荷で位置が変わるような不具合は、分解した部品を眺めるだけでは分からないことがあります。組付け後の確認に加え、必要に応じて実際の成形で改善を確かめます。

部品を新しくするだけでなく、金型として使える状態へ

摩耗したスライドコア、入れ子、ギアは、状態に応じて修理や再製作を検討できます。部品交換で、使い慣れた金型を引き続き活用できる可能性があります。

ただし、大切なのは傷んだ部品だけを見るのではなく、「なぜそこが摩耗したのか」「相手側は大丈夫か」「交換後に正しく動くか」まで確認することです。

せっかく新しく作った部品に、初日から前任者と同じ苦労をさせるのは気の毒ですからね。

名岐金型では、修理で対応できるか、再製作が必要かを、部品の状態や金型構造を確認しながら検討します。バリが直らない、スライドの動きがおかしい、ギアが摩耗しているなど、気になる症状がありましたらご相談ください。

金型一式を作り直す前に、部品から見直せることがないか、一緒に考えていきましょう。

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