【実体験】シェルトナ68が15万円!? 工作機械用摺動面油の供給不足と異常高騰、その後の価格を解説

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「あとペール缶1缶」――あの時は本当に焦りました

ここ数年、製造業では様々な資材や工具の価格高騰、供給不足に悩まされてきました。

鋼材や切削工具だけではありません。

我々金型メーカーにとって深刻だったものの一つが

工作機械用摺動面油「Shell Tonna S3 M68(通称:シェルトナ68)」の供給不足です。

弊社ではDMG MORI製マシニングセンタ「NVX5080」を使用していますが、この機械では68番の摺動面油が推奨されています。

ところが、このシェルトナ68がある日を境に、突然手に入らなくなってしまったのです。

ガソリンスタンド、工具屋さん、MISUMI、ネット通販etc…どこに連絡しても軒並みOUTでした。

今だからこそ落ち着いて話せますが、当時は本当に「あと数か月で機械が止まるかもしれない」という不安があったのです。

NVX5080は摺動面油の消費が非常に多い…

工作機械を使用していない方には少しイメージしづらいかもしれません。

マシニングセンタは、X軸・Y軸・Z軸の摺動面を保護するために摺動面油を自動的に供給しています。

DMGMORIのNVX5080は、この68の消費量が非常に多いマシニングセンタでして

弊社では24時間体制で機械を稼働させることもありますが、そのような運転を続けると一度の給油でも1週間も持たないことがあります。

つまり、

「ペール缶が1缶あるから大丈夫」

というものではないのです。

機械を止めずに加工を続けるためには、常に在庫を確保しておく必要があります。

弊社の在庫は、あと1缶まで減っていました

実は弊社も、供給不足の真っ只中では在庫がペール缶1缶だけという状況まで追い込まれました。

「次の入荷まで本当に持つだろうか……。」

そんなことを毎日のように考えていました。

もし在庫が尽きれば、工作機械を止めるしかありません。

加工が止まれば当然ながら納期にも影響します。

その後の新規受注も受けられなくなる恐れがあります。

オイルが無いだけで、会社全体の生産計画が狂ってしまう可能性があったのです。

幸いにも、本当にギリギリのタイミングで先日工具屋さんから入荷されました!

まさに滑り込みセーフでした!あの時は心から安心しましたね。

ヤフオクでは15万円という異常価格

供給不足が深刻だった頃、驚いたのがネットオークションの価格です。

通常であれば1ペール缶14,000円弱(税込)で購入できるシェルトナ68が、

なんと15万円!!

という価格で出品されていました。

最初は目を疑いました。

「さすがに誰も買わないだろう。」

そう思っていました。

ところが実際には、その価格でも売れていたのです。

売れるからこそ、その後も同じような高額出品が暫く続いていました。

なぜ15万円でも売れてしまうのか

一般の方から見ると、

「通常1万円台のオイルに15万円なんて信じられない!!!」

と思われるかもしれません。

しかし製造業では話が変わります。

例えば、

  • 数千万円から数億円する工作機械
  • 納期が決まっている量産品
  • 24時間稼働しているライン

このような状況で摺動面油が無くなり、機械が止まってしまえば、その損失は15万円どころではありません。

納期遅延による信用低下や、生産停止による損失を考えれば、

「多少高くても買うしかない」

という判断になる会社があっても不思議ではないのです。

私自身も当時は、

「もし本当に在庫が尽きたらどうしよう」

という不安を抱えていましたので、高額で購入された会社の気持ちは十分理解できます。

現在は少しずつ流通が回復

最近になり、ようやく状況は改善してきました。

弊社にも正規ルートでシェルトナ68が入荷するようになり、一安心しています。

とはいえ、完全に元通りというわけではありません。

私が確認した時点では、

  • MISUMIでは販売停止
  • 楽天市場では約25,500円(送料込み)で販売

という状況でした。


つまり、

以前よりは手に入りやすくなったものの、市場価格はまだ正常とは言えない

という印象です。

本来の価格が14,000円弱であることを考えると、依然として高値で推移している販売店や、ヤフオク・フリマ出品者も少なくありません。

なぜガソリンは買えるのに、シェルトナ68だけ無くなったのか?

ここで疑問に思う方も多いでしょう。

「ガソリンスタンドでは普通にガソリンが買えるのに、なぜ工作機械用の摺動面油だけが出荷停止になったのか?」

私自身も最初は不思議に思いました。

石油から作られるのであれば、ガソリンがある以上、潤滑油も普通に作れるはずではないかと思ったからです。

しかし調べてみると、実際はそんなに単純な話ではありませんでした。

まず、Shell Tonna S3 M68は、単なる石油ではありません。

高度精製されたベースオイルに、

  • 摩耗防止剤
  • 防錆剤
  • 抗酸化剤
  • スティックスリップ防止剤
  • 摺動面へ付着させる特殊添加剤

など、複数の添加剤を配合して初めて完成する高性能な摺動面油です。

つまり、原油さえあれば作れる製品ではなく、これらの添加剤や原料のどれか一つでも供給が滞れば、生産量は大きく落ちてしまいます。

さらに、潤滑油はガソリンとは違い、多品種少量生産の製品です。

エンジンオイル、油圧作動油、ギヤオイル、タービン油、コンプレッサー油など数多くの種類があり、その中の一つが摺動面油です。

供給量が限られた場合、メーカーは工作機械メーカーへの初期充填油や長年取引のある大口ユーザーを優先し、一般販売店への出荷を制限することがあります。

その結果、

  • 工具商社では入荷未定
  • MISUMIでは販売停止
  • ネット通販、フリマ等ではプレミア価格

という状況が生まれたのだと思われます。

今後も「在庫を持つ重要性」を痛感

今回のシェルトナ68不足を経験して、改めて感じたことがあります。

それは、

「消耗品こそ、ある程度の在庫を持つことが会社を守る」

ということです。

切削工具や材料はもちろんですが、普段はあまり意識しない摺動面油のような消耗品でも、供給が止まれば生産そのものが止まってしまいます。

以前は「なくなりそうになったら注文すればいい」と考えていましたが、今回の経験を経て、その考えは大きく変わりました。

世界情勢や物流は、今後も何が起こるかわかりません。

だからこそ、重要な資材ほど適切な在庫を確保しておくことが、結果として会社の安定した生産につながるのだと実感しています。

まとめ

シェルトナ68の供給不足は、単なる「オイルが買えない」という話ではありませんでした。

私たちのような金型メーカーにとっては、工作機械を止めるかもしれない深刻な問題だったのです。

幸い現在は流通も改善傾向にありますが、価格はまだ完全には落ち着いておらず、いまだにヤフオクやフリマサイトでは本来の価格よりかなり高額で販売されているケースも見られます。

今回の経験を通じて改めて感じたのは、製造業においては設備だけでなく、それを支える「消耗品」の安定調達も非常に重要だということです。

今後も世界情勢の変化によって、同じような供給不足が起こる可能性は十分考えられます。

だからこそ、今回の経験を教訓として、重要な資材の在庫管理を見直していきたいと思っています。

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