今回はスライド構造でのアンギュラピンの角度について。アンギュラピンはスライドを案内するためについているわけですが、同じような角度だからといってスライドの角度とアンギュラピンの角度を同じにしてしまうわけにはいきません。なぜ同じだとだめなのか?ってことも含めてスライドとアンギュラピンの角度の関係について今回は書きたいと思います。
スライドの角度とアンギュラピンの角度について
スライドのテーパー部分の内側にアンギュラピンを設置する場合と、外側に設置する場合の2パターンを例に出してみます。
スライドのテーパは2パターン共に25度の設定でいきます。(一般的にスライド、アンギュラピンの角度は15度~30度くらいが多いです)
例1:アンギュラピンがスライドテーパーの内側の場合のNG例
まず上の図はスライドの角度25度に対して、アンギュラピンが30度。これはNGです。見れば一目瞭然!?かもしれません(笑)。スライドが入る(覗いてくる)入口の距離がアンギュラピンのほうが角度が大きいせいで狭くなっていますよね(矢印水色)。これではアンギュラピンとモールドベースの間にスライドをぶつけてしまい、どれだけ頑張ろうが1か月経っても1年経ってもスライドは入ってくれません。赤と水色の矢印で距離の長さを示しましたが、赤のほうが長くて水色のほうが短いですね。スライドをスムーズに入れるにはこの逆でなければいけないということです。
例1のOK例
ではOKな例です。角度はNG例の逆。
先ほどの逆でスライド25度に対してアンギュラピン20度です。これならスムーズにスライドが入ってくれるというのが見ただけでもわかると思います。上の図でいえば赤の矢印であるスライドの入口の距離のほうが大きくなければいけません。
スライドとアンギュラピンの角度が同じではダメ?
「いやいや、そもそも同じ角度で良いでしょ?スライドとアンギュラピンは同じ角度ではダメなの?」
という疑問は当然あるかと思います。同じ角度なら当たり障りないようなイメージがありますからね。しかし、実はスライドとアンギュラピンの角度を同じにしてしまうのもNGなんです。なぜ同じ角度ではダメなのかというと、やはりNG例同様モールドベース側のスライドの入口が毎回型が閉まるたびにぶつかりがちになってしまうことで、型(PL)がうまく閉まる時と閉まらないときが出てきたりします。また同じ角度で動作することでスライドテーパー部にカジリが出る可能性もあり、抵抗が強くなることでアンギュラピンが折れたりと後々トラブルが出てくることもあり得ます。後々アンギュラピンの角度を変更可能な設計にしてあれば良いですが、なかなかそういうわけにもいかないのではないでしょうか。(小さなスライドならまだ入れ子交換のような方式でアンギュラ部を作ることは可能かもしれませんが大きなスライドとアンギュラピンではその後の改造はかなり厳しいはず)
PLが開いていくとスライドとアンギュラピンも離れていく、という設計が望ましいです。
例2:アンギュラピンがスライドテーパーの外側の場合
では、スライドテーパの外側にアンギュラピンを設置した場合のNG例に行きたいと思います。
例1とスライド、アンギュラピンともに角度が同じですね。こちらも例1と同じ理由でNGとなります。赤矢印のほうの距離が大きくなることで、型が閉まる時にスライドとモールドベースがぶつかってしまい、PLが閉まりません。
ぶつからないようにするには、例1同様スライドの角度よりもアンギュラピンの角度のほうを小さくしなければいけません。
例2のOK例
水色の矢印のほうが短い(距離が短い)
このようにすれば型が閉まる際になんの抵抗もなくすっとスライドが入ってくれるはずです。またこの場合もスライドとアンギュラピンの角度を同じにするのはNGです。理由も同じです。
まとめ
まとめです。
- スライドとアンギュラピンを同じ角度にしてはいけない(型が閉まらなくなる)
- スライドの角度よりもアンギュラピンの角度は-2~-5度小さくする
- アンギュラピンの角度のほうを間違って大きくしてはならない(型が閉まらなくなる)
- 注意することはアンギュラピンから案内されたスライドがテーパ部に入りやすいかどうか
今回は目視でもわかりやすいようにスライドとアンギュラピンの角度の差を5度で設定してやりましたが、実際には2~3度でOKです。(スライドが25度ならアンギュラピンは22~23度)とにかく型が閉まる時にスライドがモールドベースにぶつからないこと、型が開くとともにアンギュラピンとスライドが離れていくことをイメージすれば角度をどうすればよいかはおのずとわかると思います。
ということで、今回はアンギュラピンの角度を決める際の基本的なところとして、スライドとアンギュラピンの角度の関係についてを書いてみました。