前回は簡単なFANUCのNCプログラムを解説しましたが
今回は穴あけ加工について解説していきたいと思います。
穴あけって手動だとめちゃくちゃメンドクサイですよね。
弊社では昔複数穴をすべてCAMに頼らず1個1個手であけていたんですよ。
で、タップはボール盤やラジアルでっていう。
ま~それの面倒なことといったら・・・
しかも折れないか心配だったり、送りを間違えてクラッシュさせてしまったり、
なにかと神経使ってて、穴あけってやってることは地味なのに妙に疲れるんですよね。。
いつのころからかCAMで穴あけをするようになってからは随分と楽になったものです。
では、そろそろ解説に参りたいと思います。
FANUC 穴あけ用プログラム
企業によってさまざまかと思いますが、
穴あけプログラムの中でも最も使用されているのが
G81(ドリルサイクル)G83(深穴)、G84(タップ)ではないでしょうか。
今回はそんな穴あけを代表するNCプログラムの
Gコード、Mコードを解説していきます。
穴あけ用Gコードのまとめはこちらから
センターのプログラムG81
基本中の基本ですが、穴あけをするにはまずはセンターもみが必要ですね。
センターとは簡単に言えばドリルの案内の役割になります。
では早速ですが、センターのプログラムと行きましょう。
センタードリルは13mmの
刃先90度の角度で
面取りまで出来る工具を使用しています。
N0001
(DIAM=13.0000,ANG=90.0000,DRILL)・・・・・・13mm角度90度のセンタードリル
T13
M06
T13 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・工具番号は13番 今回は工具交換無し
G90G00X0.Y0. ・・・・・・・・・・・・・・・・G90アブソリュート、G00の早送りでX0Y0まで移動
G43Z100. ・・・・・・・・・・・・・・・・・G43工具長補正でZ100.でセット
S2000M03H13 ・・・・・・・・・・・・・・・・2000回転でM03で正回転 H13は工具長番号
M08 ・・・・・・・・・・・・・・・・クーラントON
G17G98G81X12.Y35.Z-3.4R5.F60 ・・・・・・・・ここは下で解説
G80 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・固定サイクル終了
G17G00X0.Y0. ・・・・・・・・・・・・・・・・早送りでX0Y0に移動
M09 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クーラントOFF
G91G28Z0.M05 ・・・・・・・・・・・・・・・・Z軸原点復帰 M05主軸停止
M1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オプショナルストップ(一時停止)
M30 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プログラム終了
G17~の解説
G17はXY平面指定、G98は飛ばしてOKです。
そして、X12.Y35.の位置に移動してG81のドリルサイクルでZ-3.4までF60で加工します。
R5.というのはリファレンス点というもので、つまりZ5.の位置まで早送りで移動して、
そこからF60でZ-3.4まで行くという意味です。
リファレンス点は間違えているとぶつけてしまうのでワークとセットで常に把握しておきましょう。
G81ドリルサイクルとは?
G81のドリルサイクルというのは
目的のZの値まで一度も上がらずノンストップでF値の速度でず~っと加工していく指令です。
F値を間違えたり、深すぎる穴をあけようとすると工具が破損するかもしれないので注意しましょう。
深穴(ドリル穴)加工のプログラムG83
続いて深穴加工です。
深穴加工というのは、一定のZピッチまで来たらR点まで上がり、切り屑を排除しつつまた目的のZ値まで加工を繰り返して穴を開けていきます。
例えばZ-2.まで入ってR点に戻り、再びZ-1.9まで早送りで下がってそこからZ-4.まで入って…のような動作ですね。
こちらがG83のプログラムです。
前述したセンターの部分と同じものは割愛させていただきます。
N0001
(DIAM=5.2000,ANG=120.0000,DRILL) ・・・・・・・5.2mmつまりM6の下穴です
T06
M06
T06 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・工具番号6番です(工具交換は無し)
G90G00X0.Y0.
G43Z100.
S700M03H06
M08
G17G98G83X12.Y35.Z-28.R5.Q1.F40 ・・・・・・・ここは下で解説
G80
G17G00X0.Y0.
M09
G91G28Z0.M05
M1
M30
G83でのG17~を解説
センターであけたX12.Y35.の位置にF値40の速度でZ-28.まで穴をあけることになるのですが、今回はG81とは少し違ってきます。
Q1.というのは、Zピッチの意味で、何ミリづつドリルを送っていくかという数字です。
今回はQ1.としているのですが、これはピッチ1mmを表しているので、
Z-1.までいったらR点であるZ5.まで一旦早送りで上がり、再びZ-1.からZ-2.までF40で加工してまたZ5.まで早送りで上がり…をZ-28.まで繰り返していきます。
これがG83の深穴加工になります。
なぜこのような加工をするのかというと、
穴あけの基本でもあるのですが、ドリルを上げずに加工していると
切り屑がどんどん中で溜まっていき、切り屑の逃げ場がなくなると
それが邪魔をして抵抗になり、穴が曲がったりドリルが折れてしまうからです。
浅い穴なら必要ない場合もありますが、
穴が深くなればなるほど切り屑を外に排除してやる必要が出てきます。
ボール盤やラジアルの穴あけと一緒ですね。あと、無理なドリルへの負荷は寿命を縮めます。
タッピングのプログラムG84
では、最後にG84のリジットタップに行きたいと思います。
G84のリジットタップとは、Zの目的値まで正回転でいったら逆回転になって上がってくるという指令です。
それも一気に20~30mmいれるのでなく、5mmおきや10mmおきなど、いれては戻しいれては戻しで目的値まで加工という指令が出来るのが特徴です。
工具に負荷をかけずにいけるので、破損を防ぎ工具寿命も伸ばせます。
N0001
(DIAM=6.000,TAP) ・・・・・・・・・・M6のタップです
T10
M06
T10 ・・・・・・・・・・・・・・・・工具番号は10
G90G00X0.Y0.
G43Z100.H10
M08
M29S500
G17G98G84X12.Y35.Z-24.R5.Q10.F500 ・・・・・・・下で解説します
G80
G17G00X0.Y0.
M09
G91G28Z0.M05
M1
M30
G84での解説
もはやほぼすべて割愛させていただいております。
上のプログラムはG83で5.2mmの下穴をあけたところにM6のタップをたてるプログラムになっています。
X12.Y35.の位置にZ5.まで早送りで移動して、Z-24.までF500でタップをたてていきます。
ここでもQ10.というのが登場していますが、前述したとおりQの値はZピッチになりますので、10mmずつ順番に入っていき、
最終的にZ-24.までいくという形になります。
流れ的には、
Z-10.まで加工→Z5.まで逆回転で戻る→Z-20.まで加工→Z5.まで逆回転で戻る→Z-24.まで加工→終了、と
このような感じですね。
G84はG83とは違い、R点に戻るとき(逆回転で戻るとき)もF値と同速度(ここではF500)になります。
まとめ
G81,G83,G84という一般的によく使われるであろう穴あけの固定サイクルについて解説していきましたが、如何だったでしょうか。
パッと見で難しそうなイメージもあるNCコードですが、順を追って意味も分かれば特に難しいこともなかったのではないでしょうか?
穴あけの順序というのは常に、センター(面取り)、ドリル、タップとなるので
G81→G83→G84という流れとなり、この順序が変わることはありません。
くれぐれも下穴ドリル径とタップ、そしてT番号を間違えないように注意して作業を行いましょう。
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